「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第21章】
【野生生物との共存できる農業を目指して】
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【Pesticide paradox(殺虫剤の逆理)】
これは、農薬が害虫だけではなくNatural enemy(自然発生する天敵)を殺すこと。これにより殺虫剤の散布が行われた地において、天敵を失った生き残りが増殖し大量発生してしまうといった効果である。
これらの害虫「誘導異常発生」を「Resurgence(リサージェンス)」と呼ばれ、農薬抵抗問題と合わせて懸念されている。
【化学肥料依存からの脱却】
これらのことから、生産性向上の利点と防除効果が高いメリットを持つ化学肥料であるが現在、日本においては農林水産省を筆頭に化学性農薬依存から脱却が提唱されている。例えば、粘着板などを使用した「物理駆除」や病害虫抵抗性品種の利用などによる、環境汚染に影響を与えにくい駆除方法が推奨されている。このことは、IPM(総合的病害虫・雑草管理)として農林水産省により定義されている。(http://www.maff.go.jp/j/syouan/Shokubo/gaicyu/)加えて2004年には、IBM(Integrated Biodiversity Management)が提唱された。これは、前述のIPMに生物多様性の保全を含めた画期的な政策であるが、現時点では生産性をあまり見出せないIBMに対し協力的は農家や団体は少ない。今後、技術向上を促進させるとともにIBMに対する社会的理解と国家的な資金補助が不可欠になってくる。
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「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第20章】
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/jbo/index.html
前回の記事で取り上げた、グローバルのMillennium Ecosystem Assessmentの発表を受け、日本においても環境省により「日本生物多様性総合評価(Japan Biodiversity Outlook)」がまとめられた。
これによると、相対的な生物多様性における深刻度はグローバルと比較すると低いものの、農業状況は独特のデータを表している。
【1.耕作放棄地の拡大】
上記の表に示したとおり、日本は農業の衰退に伴って1961年まで拡大し続けていた耕作地は次第に減少し、1975年以降の高度経済成長期から始まった都市部過密居住化などが影響し、耕作放棄地が拡大した。
【2.圃場整備(Farmland Consolidation)】
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日本の水田の多くは排水性が悪い湿地に造成されてきた。そのため、大型農業機等を使用できず生産効率が悪かった。そこで1960年代に、圃場整備(Farmland consolidation)が実施された。これにより、1970〜80年頃には整備圃場の面積が水田総面積の60%を超えた。
【3.化学肥料および農薬の影響】
化学肥料(chemical fertilizer)だけではなく、家畜の糞尿といった畜産廃棄物も度外視できません。その理由として、糞や尿には窒素とリン酸が含まれるため水質に影響を及ぼします。自然界で発生するこれらの要素は、植物による吸収や土壌に還元され原生自然のサークル内に収まります。しかし、人為的に発生した事によりその土地では収支されなくかった場合、これらは許容範囲を超えた余剰分として地下水や系外に流出します。このことは、言うまでもなく生物多様性において大きな影響を与えます。
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園芸用肥料をアクアリウムに代用できるのか?
結論から言うと…やめた方が良いです。
しかし、絶対にダメという訳ではありません!
という事で、順に考察していきたいと思います。
①成分比較!
上記に、表したとおり主なアクアリウム肥料の成分と園芸用肥料の成分を比較してみました。
一見すると「園芸用肥料」の方が、様々な要素が含まれていて良いのでは?と、感じる方も居るかも知れませんが…
このように色々な要素が含まれる事こそがアクアリウム肥料として不向きである一番の原因と言えるのです。
②アクアリウムに必要とされる栄養素とは?
以前の記事で、この件については詳細を取り上げましたので今回は簡素にまとめます。
ここで、注目したい点はアクアリウムにおける3大要素「窒素」「リン」「カリウム」です。
そして、これらは量ではなくバランスが重要になります。通常、水槽において「リン(P)」は魚たちのエサの食べ残しにより、「窒素(N)」は排泄物や枯葉などから自然と構成されています。つまり、3大要素を改めて新規投入する事によって、栄養素の過剰摂取やバランス崩壊を招く逆効果が懸念されるのです。
このことが総合的に栄養素をたくさん含んでいる園芸用肥料はアクアリウムに不向きであると言えます。
③肥料取締法について
そして、ここからは栄養用肥料をアクアリウムに使用できる可能性について、検証します。
冒頭に、園芸用肥料の代用は絶対ダメではないと述べたとおりベテラン勢の中にはアクアリウムに用いるアクアリストもいらっしゃいます。上記の、問題点をしっかりと理解し解決すれば園芸用肥料をアクアリウム肥料と同様に使用可能です。そのカラクリを知る上で、上記の肥料取締法(昭和二十五年法律第百二十七号)第二十二条の二第一項の規定に基づき、特殊肥料についての表示の基準となるべき事項を次のように定め、平成十二年十月一日から施行を理解する必要があります。これは、農林水産省が定めるもので、その数値の測定方法についても細かく規定があります。しかし、アクアリウム肥料においてその栄養素における詳細は不明な事が多いです。
なぜなら、これらは肥料ではなくアクアリウム用品であるか為に表示義務を有さないからです。
商品名にも「肥料」とは、一言も書いていないはずです。なぜなら、肥料ではありませんから。
肥料は使い方を誤れば大変危険です。それは、アクアリウムに限らず人体、生物、自然さまざまな事象に影響を与える可能性があります。
④まとめ
見出しの『結論から言うと…やめた方が良いです。しかし、絶対にダメという訳ではありません!』とおり、園芸用肥料のアクアリウム使用は、基本的にはおすすめ出来ないですが可能です。
これらを理解した上で、アクアリウム肥料を使用すると必要成分の抽出や安全性を考えると高くも無いかも知れません。一方、園芸肥料はアクアリウム肥料と比べものにならない種類が市場にありますし需要が高いため価格も低めです。
色々と模索しながら、自分の水槽やライフスタイルに合った道具や方法を試行錯誤する事は、アクアリウムの楽しみの一つであると私は考えます。
今回の考察が、皆様のアクアライフに貢献できれば幸いです。これからも、素敵なアクアライフを!
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「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第19章】
【農業の発展と人類の進歩】
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そもそも、これまでの狩猟を中心とする生活と農耕を発展させた暮らしにはどのような違いがあるのでしょうか。さまざまな答えが挙げられる中で最も大きな違いは、安定的に食料を獲得できるかどうかに由来します。
つまりそれは、原生自然における予測不可能な環境変化や自然災害に限りなく左右されない、人類にとって都合の良い環境を作り出したと言い換える事ができます。
また当初、原生自然と二次自然の均衡は保たれていました。しかし、人類はより多くの利益と富を生み出す為に必要以上の生産を行うようになりました。これが、前回のgreen revolution「緑の革命」にリンクします。
これにより原生自然は縮小し人類にとっての効率化を促進した結果、今や二次自然までもが危機的減少傾向にあります。
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そして、皮肉なことに農作物にとって良好な環境を提供した事によって人々は収穫量を増大させることができました。収穫量に比例して害虫や雑草を駆除したことは、農薬汚染を促進させてしまったと同時にその良好な環境に依存する植物や生物が発生したことは、生物多様性における(disturbance:耕起撹乱)が引き起こされたという極面を表しているのです。
(引用:https://www.millenniumassessment.org/documents/document.356.aspx.pdf)
Millennium Ecosystem Assessment、通称:MAによると人類に福利をもたらす生態系サービスecosystem service)のうち60%の項目で悪化が報告されています。
「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第18章】
農耕によって大きく変化した人類の生活と環境
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農業には自然の改変を伴う。
上記の、図解は農業における3大要素とそれに伴う自然への影響についてまとめたもである。
特に、今回注目したい点は、養分における種類の変化。特に化学肥料の使用にシフトした20世紀半ばに起こった「Green Revolution (緑の革命)」についてである。これは、品種改良や人為的理由により改変された養分を肥料として投与することにより、農作物の高収穫およぶ生産性の効率化促進したものである。
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しかし、これを機に化学肥料や農薬汚染によって原生自然が大きく破壊されてしまったことは言うまでもありません。それは、まさに人類の農耕文化と地球史における大きな革命と言えました。
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「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第17章】
長期的見解(生息地分断)
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【絶滅のタイムラグ】
これは、自然界における種の変化や変動にはある程度の時間を要するということである。仮に、ある地点で種や生態系に懸念される何かしらの負の要因が加わったとしても、目に見えて影響を及ぼすまでには、ある程度の時間を要するということである。
また、絶滅の進行具合や種類によってそれらがもたらす影響は20年程で単発的に作用するものから、100年後に初めて変化を表し、その後長期的に影響を及ぼすものがある。
我々、現代人に必要とされること…
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1)多様性の高い原生自然や二次自然などの生息域を確保し、極力その範囲を広げること。
2)生息地同士のコリドーを意識し、連続的な生息空間を創造すること。
言いかえれば、上記の絶滅のタイムラグを肯定的に利用し未来への復元および修正が十分に可能であるという事が証明できる。
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「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第16章】
人間活動による自然のDestruction(破壊)やDivision(分断)は生物多様性における大きな脅威の一つと言えます。
これらをHabitat Fragmentation(生息地の分断化)として大きく二つの要因に区分することができます。
I .生息地の総面積減少
Ⅱ.コアに生息域を縮小させて独立する
これらのプロセスは並行して促進され、区別が難しくその種によっても効果は様々です。なかには、この効果が功を奏して拡大や繁栄する種も存在します。
【参考:Levinsのメタ(パッチ多数集による)個体群モデル(1969年)】
上記の表を基に生息地の分断化が影響を及ぼすメカニズムを考察すると
1)面積の効果…species-area relationship(種数-面積関係)とは、生息地の面積が縮小するとそこに生息する種も減少するという事である。事由として、a.大きなarea=Includes diversity(多様性を含んでいる)、b.そもそも大型生物などは、小エリアでは生息できない。→SLOSS(Single Large or Several Small)から言えることは、保護区のデザインや創造する際には目的と状況に応じて適正な選定をする必要があるということである。
2)個体数の効果…個体群が分断されて小さくなると、生息個体数が少なくなる。これは、繁殖や生存が制限されるAllee effect(アリー効果)にも由来する。小さな個体群では、大きな個体群に比べて確率的なゆらぎの影響を受けやすい。また、個体数の減少は、遺伝的多様の低下や近親交配を引き起こす恐れがある。→genetic deterioration(遺伝的劣化)
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3)エッジ効果…edge(和:縁)、つまり境界に近い部分は、外部からの影響を受けやすくその環境の変化が著しい。
一般的に大きくて円形に違い生息地ほどエッジ効果の影響を受けにくいとされている。その為、日本のように小さな生息地を管理する場合には、その形状にも配慮する必要がある。
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4)孤立の効果…外来種の侵入や病気の伝橎が促される反面、地球規模で考察した場合corridor(回廊)によって流動的に繋がれた生息地間の重要性が変動を続ける現在の地球には求められている。特に、回遊魚のように本来は川と海を行き来する生物や渡り鳥にとって、これらのコリドー消失は生存や種多様性に大きく影響を与えてしまう。
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