「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第15章】
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Agroforestry(アグロフォレストリー)…原生的自然への開発圧を低減し、生産活動と生物多様性保全を両立しうる二次的自然。
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例えば、静岡県にある茶畑などはAgroforestryの代表的な成功事例である。その理由は、以下の二つの効果が挙げられる。
①景観スケールでの複合的な維持→資源や管理の面において維持するシステムを備えている。伝統文化として継承され続けられる価値(ブランド)を保持している。
②経済的付加価値が存在する→①の理由も含め、その二次的自然に経済的な価値や生産活動が維持される事で集落や町といった生活拠点が構築される。
【まとめ】
現在、生物多様性を含めた環境問題が世界中で取り上げられています。地球温暖化や海洋酸性化など、グローバルな課題として国家規模で議論が重ねられています。しかし、根底を探るとさまざまな分野で改善や維持を必要とされている課題が在り、それらは必ずしも規模の大きな問題ばかりでは無いという事です。今回、探究した話題のなかにも我々の身近な部分で発生している問題も少なくはないです。言いかえれば、小さな集団や個人がすぐに取り組める環境改善方法があるという事です。むしろ、多くの問題は私たち一人ひとりの些細な意識改善により改善され、それらはコアとなりやがて大きな環境サークルを描くという例を上の図形は表しています。二次的自然の重要性や、これまでの記事で述べているように無理難題な卓上空論や文明を逆走するような行為は不要だと思いますし、成果を生み出しません。大切なことは、現代の人間生活を維持しながら持続可能な未来を生み出す事のできる共存力だと考えます。
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「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第14章】
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突然ですが、皆さんは「メダカ」という生き物をご存知だろうか。
2020年、令和初期の現在にてこのような質問を投げかけると「バカにしてるのか!?」と叱咤されるという恐れと安心を感じます。なぜなら、50年先…もしかすればもっと近い将来にはこのような問いかけが馬鹿げたものとはならない、深刻な問題が今の世の中で起こっているからに他ならないからです。
【レッドデータブックが伝える危機】
前述の記事にて取り上げた、環境省が刊行するレッドデータブック1999年2月(当時:環境庁)にメダカは絶滅危惧II類 (VU:Vulnerable)として掲載され、2003年5月には絶滅危惧種として指定された。「メダカの学校」などと歌われたように、我々にとって身近な生き物までもがこのように減少および絶滅の危機に直面している。
【三つの危機】
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上記の結果等を得て、2002年に閣議決定された新・生物多様性国家戦略において、以前の記事で取り上げた我が国における「三つの危機」が整理された。
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人間活動と開発…人間活動による直接的な生物種の減少や自然改変により生物の生息空間の消失。
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自然に対する働きかけの縮小…人間活動により、これまで保守されてきた生物多様性の崩壊。
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外来生物と新規化学物質…人間により持ち込まれた外来種(生物)による在来種の生態系破壊および負の影響。
そして、10年後の2012年に新たな危機として「地球環境の変化による危機」が四つめの危機として加わった。これは、地球温暖化や海洋酸性化といったよったグローバルな問題である。我々、人間は国境を越えてこれらの生物多様性問題やこれらの問題に対して一丸となって対策を講じなくてはならないステージに差しかかっている状況である。
自国の有益だけを考えて行動する時代はもはや流行しない。むしろ、先進国として新興国や途上国に負担をかけないような政策や経済を考え、行動する必要があると私は考えます。
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「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第13章】
【原生自然と二次的自然】
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Semi-natural(半自然的)とは、人間が自然(原生)環境を変えたり、あるいは新たに創り出して発生した環境を意味する用語である。つまりは、二次林、二次草原、農耕地などの長期にわたる人の自然への働きかけの中で形成されてきた自然を意味する。
【二次的自然と原生的自然の相違点】
ここで注意したい事は、原生的自然と二次的自然にはDisturbance regime(撹乱体制)の違いがあり安定的に持続するものでは無いと言う事である。
【原生自然保護の重要性】
上記は、世界の森林面積減少推移と森林保有率の高い上位10ヶ国を表にまとめたものである。上記の値には、国立公園や一部人工的に開拓された自然(半自然的)が含まれているため、本意的な原生自然が占める割合は1995年時点で全球陸域面積の17%しか存在しないといわれている。
また、日本においては植生自然度10(自然草原)と植生自然度9(自然林)の占める割合はわずか19%(1999年:環境庁自然保護局)にとどまっている。
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「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第12章】
【ニュータウン建設に伴う大規模開発】
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1990年から2000年にかけて経済の都市集中化に伴い、東京付近や大阪近郊を中止として大規模なニュータウン建設が盛んとなった。広大な敷地を重機械で開発すると同時に、鉄道や道路などのインフラ設備が形成され、大型ショッピングモールや病院、学校などのさまざまな人間生活を豊かにするための場が、急速に整えられました。
各地で行われた、この大規模開発によって日本の土地利用は大きく推移しました。
上記の表にまとめたとおり、森林や農用地といった原生自然および半自然環境が減少し、それに反して道路や宅地といった人為的環境が拡大した事が確認できます。
もちろん、これらの土地利用の変化はそこに生息する動植物たちに大きな影響を与えます。
【都市のなかにある半自然】
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一度消失してしまった原生自然を元の形に復元することは限り無く不可能に近いです。そこで、我々は都市環境のなかに木々を植生させ半自然環境の拡大を目指しました。道路に埋め込まれた街路樹や集合住宅の共有部分に庭や自然公園を築くことで自然を復元させました。
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0780pdf/ks0780.pdf
国土交通省/国土技術政策総合研究所が示した調査結果では、上記の表のとおり道路緑化樹木は年々相対的に増加していることが確認できます。
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「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第11章】
【原生自然⇔都市環境】
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ここで考えるのは、原生自然への立ち返りでは無くあくまで都市環境を前提とした自然との調和です。
1960年代に起こった日本の高度経済成長期からおよそ60年。
単なる経済成長のみならず、自然との融合や未来を見据えた持続可能な街づくりこそが、未来の都市環境と言えるであろう。
では、それまでの日本においてはどうだったのであろう?
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【人力工事から重機械による開発へのシフト】
日本には長期にわたる歴史があり、古くから多くの建築や土地開発が活発に行われてきた。しかし、その時に大きな環境問題が生じ無かった理由は、その全てが人力工事によって行われたからである。城などの歴史的建造物を見てみると岩の間や柱の下から草木が生い茂っている事があると思う。しかし、現代の建造物においてビルや道路にこのような光景は見つからない。これこそが高度な都市化がもたらした弊害である。
かつて、人力による作業では掘削するにも限界があった。また、建物の造りにおいても材料を加工するのではなく、それぞれの素材の特性を利用して用いることの方が多かった。これにより、たとえ耕されたとしても土壌の種子や植生は破壊されにくく素材についても同じことが言えた。しかし、重機械による開発が活発化すると作業効率は各段に上がると同時に、これらの自然との調和は瞬く間に失われてしまった。
「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第10章】
三つの栄養段階(Three nutrition stages)と無機環境(Inovernic Environment)からなる生態系(Ecosystem)の機能がいかに効率よく、安定的に維持されているかを測る指標が生態系機能(Ecosystem Functioning)であり、近年その指標を用いた研究が活発に為されている。
→その結果、生物多様性が失われることによって資源の利用効率や生産性が低下し、多様性の高い群集ほど全体として効率よく資源を利用でき、また生産性も向上する。(Tilman et al.,2001)ということが判明した。
∴生物多様性の高い生物群集は安定性が高いという事がわかる。
【生態系の維持=人間生活の維持】
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生態系が健全に機能することによって、人を含む全ての生物とそれを支える環境が保証されるということである。その恩恵が4つのfunctionから構成される4つのサービスによって示されている。
(Millennium Ecosystem Assessment 2005)
私たち人類が壮大な自然を眺めてspiritualにさまざまな刺激を得ることができるのは、遠い存在としての幻想的感覚では無く、むしろ本能的に生命体として近親な関係性を潜在的に見出すことによって感じとっているからなのかもしれません。
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「自然破壊」とは何か?生態学の視点から考察して見る【第9章】
劣化し続ける日本の生息域
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注目したい点は、日本における湿地の減少。
【日本の湿地割合(現在)】
都市化や水田耕作面積の減少に比例して、これらの消滅が発生しています。
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最近、街でトンボなどの湿地を生息拠点とする生き物を見かける機会が減りました。生物多様性の存続において、これらの陸水生態系、沿岸、海洋生態系、島嶼生態系の存続が極めて重要とされています。
以前に記述したように、地球のおよそ70%は水で出来ています。そのうち、97%は海水で我々人類が必要とする淡水はわずか3%程です。この淡水維持において湿地は地下の帯水層に水を補給し、泥やそこにある湿った草原は自然のスポンジとして雨を吸収し河川の氾濫を抑えます。
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